ボツリヌス治療学会
今日はボツリヌス治療学会1日目でした。
私は初めての参加で、緊張しながら行ってきました。
症例報告の一般口演を出していましたが、無事終えることができました😊
甲状腺眼症による斜視へのボツリヌス治療や小児科でのボツリヌス治療などを知ることができ、とても勉強になりました。
斜視のボツリヌス治療を行っている医師は多くないのですが、今日の眼科セッションでは斜視ボツリヌス治療を行う女性医師が集結したように思います。
どの先生も先輩ですが、気さくにお話ができて楽しかったです。まるで眼科ボツリヌス女子会でした笑
ボツリヌス毒素(ボトックス®︎)による斜視の治療は、脳神経の麻痺による斜視や、成長してから発症した急性内斜視の患者さんに特におすすめです。
これからも学会などで積極的に情報収集していきたいと思います。
斜視の治療に対する誤解
斜視の治療について、一般の方や、眼科医にすら誤解されていることがあります。
たとえば
❌治らない
❌手術しても元に戻る
❌高額な治療費がかかる
❌二重に見えるようになる
❌一生で数回しか手術できない
などです。
本当は、手術で
✅治ることが多い
✅ずれは確実に減る
✅保険適用
✅二重に見えることはまれ
✅回数に制限はない
です。
大人の患者さんで「子どもの頃に治らないと言われた」とか「今まで治ると知らなかった!」という方にたくさんお会いします。
そして斜視のために「初対面の人と話すのが苦手」「電車で座ったらいつもうつむいている」「写真は自分の目の位置をアプリでずらしてからお友達に送る」など苦労話が必ずあります。
見えづらいのは斜視のせいなのに、老眼とか、白内障とか言われて納得できないまま過ごしていた、という方もいらっしゃいます。
そのような患者さんは、手術で斜視が治ると、とてもとても喜んでくださいます。
治療後、患者さんの表情や装いまで明るくなる様子を拝見するたび、私は斜視を専門にして良かったと思います。
見た目にも、視機能にも大きく影響する斜視。
誤った考えや知るチャンスがないせいで患者さんが必要以上に困った生活を強いられることのないよう、情報提供をすることが大切だと思っています。
弱視ってなに?
私たちはものを目で見るのではなく、脳で見ています。
目で受け取った情報が信号に変えられ、その信号が脳に送られて、脳は見たもののイメージを作り出します。
視力は、生まれてからものを見ることで発達するものです。
視力の発達ってつまり、脳の発達なんですね。
小さい頃に目で受け取る情報があやふやだったり、情報が来ないと、脳で見る力が伸びません。
この、見る力が年齢相応に伸びていない状態が弱視です。
弱視の主な原因を以下にまとめます。
・ピンぼけ
強い遠視や乱視のために目がピントを合わせることができないと、見る力は伸びません。
目でピントの合った像をキャッチするために、遠視や乱視をしっかり補正するメガネをかける必要があります。
この弱視の治療のためのメガネは、お風呂・寝るとき・運動などでメガネをかけられない場合を除いて、いつもかけることが大切です。
弱視の多くは、8歳くらいまでに治療をすれば良くなります。
ですが、弱視に早く気づいて早く治療ができればそれに越したことはありませんので、心配なことがある場合は眼科医に相談してくださいね。
倉敷であった学会2日目が中止に
先週、第74回弱視斜視学会がありました。
私は「貼る近用レンズの弱視斜視症例への活用」というポスター発表で参加しました。
ハイドロタック®︎という近くを見る用の貼るレンズで、手持ちの眼鏡・サングラスを簡単に遠近両用にできるというグッズを、子どもに使用しました、という内容です。
子どもにはふつう遠近両用眼鏡はいらないはずですが、近くを見るときに目が必要以上に内側に寄ってしまう内斜視のお子さんや、小児白内障の手術後でピントの調節力がないお子さんには遠近両用眼鏡が必要です。
その使い始めに、安価でお試しできる貼るレンズが良いのではないでしょうかという発表でした。
おかげさまでたくさんの方(とくに視能訓練士さん)からご質問をいただき、発表して良かったと思いました。
その学会ですが、ちょうど大雨で大変なことになった倉敷開催だったのです。
学会は7月6日(金)、7日(土)の予定だったのですが、2日目のプログラムが中止になりました。
新幹線や在来線も止まったので、たどり着けなかった人や予定通り帰れなかった人が続出しました。
私は飛行機だったので、無事行って帰ることができました。
学会前日に倉敷を観光し、美観地区の美しい街並みやかわいいお店が大好きになったので、被災された方々を思うと本当に心が痛みます。
どうか一日も早く穏やかな生活が戻るようお祈りいたします。
視線がずれる斜視。治るの?
人と目を合わせて会話するのって、大切なことですよね。
人と目が合う感覚は、相手の目が自分の目を見つめていると思うことから得られます。
では、話しているときに相手の視線がずれていたら?
どこを見ているのかな、話を聞いていない?と思ってしまうかもしれません。
視線(黒目の位置)は、人を印象づけるのにとても重要な役割を持っています。
この視線がずれるのが斜視です。
目が外側(耳側)にずれるのが外斜視、内側(鼻側)にずれるのが内斜視です。
横にずれる斜視のほか、上下の斜視や回旋の斜視もあります。
斜視は治るのでしょうか。
斜視の原因ははっきりしておらず、ほとんどが生まれ持った体質によるものです。
その体質自体を完全になくすことはできませんが、目がずれる頻度やずれ具合を減らすことはできます。
方法は大きくわけて言うと、①眼鏡、②手術 、③一部のケースでボトックス注射、です。
①眼鏡
眼鏡をかけることで目はピントの合った状態になります。
ときどき目が外側にずれる間欠性外斜視では、眼鏡をかけることではっきりした像が見えるようになるので、目がずれにくくなります(ずれる頻度が減ります)。
遠視が原因で目が内側に寄る調節性内斜視では、遠視のぶん目がピント調整をすることで目が寄ってしまうので、遠視矯正の眼鏡をかけることで目の位置が良くなります。
②手術
眼鏡をかけても目の位置がたびたびずれたり、ずれっぱなしならば斜視の手術を受けた方がいいかもしれません。
手術によって、目のずれ具合を減らすことができます。
具体的な手術の方法や術後の状態については、また別の記事で取り上げたいと思います。
③一部のケースでボトックス注射
小さい時から斜視があったわけではなく、大きくなってから斜視になり、ものが二重に見えるような場合には、ボトックスを目の周りの筋肉に注射する治療が有効なことがあります。
視線がずれるせいで、誤解されたり二重に見えたり疲れたりすることはあっても、得することは何もありません。
斜視は積極的に治療することをおすすめします。
赤ちゃんの視力って? 視力不良の見つけ方
赤ちゃんって、よく見えているのでしょうか?
いいえ、実は視力は、お子さんといっしょに育っていくものなんです。
生まれたての赤ちゃんの世界は、かなりぼんやり。ほとんど見えていません。
お腹の中にいるときからよく聴こえている耳と違って、見る力は、生まれてからものを見ることによって発達していくものなんですね。
赤ちゃんは生後2~3か月になると、視線が安定して(固視)、おもちゃを目で追いかけたりします(追視)。
この固視・追視が、赤ちゃんが見えているかのめやすです。
赤ちゃんと目が合っている!と思ったら、おもちゃを赤ちゃんに見せて、目で追うかを確認してみましょう。
もし生後2〜3か月になっても赤ちゃんと目が合わない、目が揺れていると思ったら、眼科を受診してください。
赤ちゃんは生まれつき片方の目が見えなかったとしても、「こっちの目が見えないよ!」と訴えることはありません。
片目が見えていればおもちゃを追いますし(固視・追視は良好です)、ふつうの赤ちゃんと何も違わない行動をします。
つまり、片目の視力不良は早くに気づかれにくいのです。
でも片目の視力不良を見つける簡単な方法があります!
それは、赤ちゃんにおもちゃを見せながら大人の手で左右片目ずつ隠して、そのときの赤ちゃんの反応を見るという方法です。
右目・左目を隠したとき、同じように嫌がるなら問題ありません。
でも例えば、右目を隠してもケロッとしているのに、左目を隠したときだけすごく嫌がる様子だったら、左目だけでものを見ているのかもしれません(右の視力不良が疑われます)。
隠す時間は一瞬で大丈夫ですので、反応の左右差を確認してください。
これは嫌悪反応の確認といって、とても簡単で特別な機器もいらない検査ですが、小児眼科医のれっきとした診察法なんです。
普通の視力検査ができるようになるのは3歳からですので、小さなお子さんをお持ちのご家庭ではぜひやってみてくださいね。